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Chronicle
07.03.2026

ロジスティクストゥデイ 物流×AI特番に出演 ― 物流現場に、AI実装の正しい道筋を示す

ロジスティクストゥデイ 物流×AI特番に出演 ― 物流現場に、AI実装の正しい道筋を示す
この記事のポイント

有効回答233件の「物流×AI導入実態調査2026」から、現場の実態と実装の第一歩を議論した

AIに100点を求めず、60〜80点の候補提示+人の最終判断から小さく始める実装を提示

本記事では当日の議論に、Nexgen Japanの 物流(SCM)生成AI・フィジカルAI実装 の観点からの追加考察を加え、Nexgen View としてまとめる

物流AI生成AIフィジカルAIAIガバナンス属人化サプライチェーン

目次

  1. イベント概要
  2. 調査が映す「期待先行」の現場
  3. 登壇者の論点 ― 60〜80点で回す実装論
  4. Nexgen Japanの発信: リスクとガバナンス
  5. Nexgen View: 物流とフィジカルAIの視点からの追加考察
  6. 参考文献・主要情報源

2026年6月29日、LOGISTICS TODAY主催のオンラインイベント「LOGISTICS AI AWAKENING 2026 AIドリブン実践サミット【第一幕】基礎・実装編」に、当社CEO・物流AIアーキテクト 大野有生が登壇しました。当日の模様は、同社記事「物流AI、期待先行の現場に実装の正しい道筋示す」でも報じられています。

LOGISTICS AI AWAKENING 2026 収録現場の当社CEO 大野有生の登壇席

▲LOGISTICS AI AWAKENING 2026 の収録現場。当社CEO・物流AIアーキテクト 大野有生の登壇席(出所: Nexgen Japan)

1. イベント概要

5月28日のプレイベントに続く本編。物流AIの現状と実装の基礎論点を整理する回です。登壇は次の3名、モデレーターはLOGISTICS TODAY編集部でした。

登壇者所属・役職
木地谷 健介 氏Hacobu 執行役員/Hacobu Solution Studio本部 本部長(物流データインフラ「MOVO」)
岡澤 一弘 氏KURANDO 代表取締役社長(倉庫内作業可視化「ロジメーター」)
大野 有生Nexgen Japan 代表取締役・物流AIアーキテクト

前半は「物流×AI導入実態調査2026」(有効回答233件)から実態を読み解き、後半は実装の順序へ移りました。

2. 調査が映す「期待先行」の現場

回答は荷主・物流事業者の中小から大手、経営層から現場担当者まで広がり、関心が情報システムやDX担当にとどまらない実態がうかがえます。ただし現場は「期待先行」。浮かんだ構造的課題は次の4点です。

調査が浮き彫りにした4つの壁

1

デジタル化の濃淡

倉庫内の入出庫・在庫管理はWMS導入が進む一方、伝票・送り状、日報・点呼・勤怠、配車・配送計画は紙・Excel・メール・手入力に依存。特に荷主・運送・取引先をまたぐ対外接点の業務は、自社だけではデジタル化しにくい。

2

「集めているが使えない」データ

「もっと生かせるはず」が最多。データ不足ではなく、加工・分析して意思決定へつなぐ段階で詰まっている。

3

突出する「業務の属人化」

解決したい課題は「属人化」が突出。配車・輸送手配・積付けなどベテランの暗黙知頼みの業務がAI化の主戦場だが、属人化した業務ほど難しい。

4

関心と投資の乖離

障壁は「効果が見えにくい」「使える人材がいない」「ツール選定が難しい」が上位。予算も「検討中だが予算化に至らない」が多く、関心が投資に直結していない。

3. 登壇者の論点 ― 60〜80点で回す実装論

LOGISTICS TODAYはAI活用を4レベルに整理しました。データ化の L1、意思決定補佐の L2、自律的意思決定の L3、フィジカルAIの L4。実装の主戦場かつ第一歩は L1・L2 です。

木地谷 氏(Hacobu)― 生成AI-OCRという「入り口」

輸送領域の例として AI-OCR を紹介。手書きや欄外メモ、取引先ごとに異なる書式は、位置を事前定義する従来型OCRでは扱いにくい。生成AIは書類の意味を解釈してデータ化でき、効率化の入り口になると指摘しました。

岡澤 氏(KURANDO)― 「人」に関するデータの整備

倉庫では在庫・出荷データの蓄積が進む一方、人員配置・作業進捗・作業者別実績など 「人」のデータ整備が課題 だと提示。現場情報をどの粒度で集め、どの判断につなぐかの設計が前提だと論じました。

3者共通の実装観 ― 「一気に完全自動化へ進めない」

3者共通の考えは、AIを一気に完全自動化へ進めないこと。現場は例外条件や責任分界が多く、100点の自動判断を求めると失敗しやすいためです。現実解は、AIが60〜80点の候補を示し、人が最終判断する 形。配車・人員配置・請求突合も、AIが一次処理や異常候補の抽出を担い、人のレビューで積み上げます。「データ化→活用→自動化」を一直線に進めず、60〜80点で始まる小さなサイクルを多数回す ことが要です。

4. Nexgen Japanの発信: リスクとガバナンス

大野は実装論に加え、リスクとガバナンス にも言及しました。生成AIには ハルシネーション(誤りをもっともらしく出力)、機密漏えい著作権侵害 のリスクがあり、物流では特に前二者が重要です。対策として示したのが、「AI利用ルール」と「AI管理ルール」の分離 です。

2つのルールを分けて整備する

AI利用ルール(使う人向け)

入力してよい情報の範囲、利用環境、生成物の扱いなど、現場が従う行動規範。

AI管理ルール(管理側向け)

精度劣化時の対応、責任部署、再学習やデータ保管など、組織として運用・監督する仕組み。

実装には技術導入だけでなく、説明可能性・人のレビュー・ガバナンスを組み込んだ運用設計 が不可欠 ― これが中心的なメッセージでした。

5. Nexgen View: 物流とフィジカルAIの視点からの追加考察

ここからは、当日の議論を当社のこれまでの発信と接続し、物流(SCM)生成AI・フィジカルAI実装 の2つの観点から、追加の考察を加えます。

5-1. 物流の視点:「属人化」はデータの問題であると同時に、組織設計の問題

「業務の属人化」は、しばしば「暗黙知をどうデータ化するか」という技術課題として語られます。しかし物流の実務領域においては、より根深い問題があります。

配車も、輸送手配も、積付けも、荷主・運送事業者・取引先という組織の境界をまたいで 制約が絡み合っています。物流業務プロセスのAI化が難しいのは、これらの制約条件・取引先との個別ルール がデータ化されていないからです。

だからこそ、「経営・業務・技術・組織」の4観点での検討が効きます。属人化の解消は、技術(OCRやツールの導入)だけでは完結しません。どの業務のどの判断をAIに任せ、どこを人が持つのかという 業務フローの再設計、そして企業をまたぐ運用をそろえる 組織横断の合意 があって初めて、データは意思決定に結び付きます。「データはあるが使えない」の正体は、しばしばこの設計の欠落です。

5-2. AI実装の視点:60〜80点で回すことは、PoTではなくPoVである

「AIに100点を求めない」「60〜80点の候補提示+人の最終判断」という主張において重要なのは、60〜80点で小さく回す目的が 技術精度の検証(PoT: Proof of Technology)ではなく、価値の検証(PoV: Proof of Value) にあるという点です。「認識精度が何%出たか」ではなく、「その精度でも人と組み合わせれば業務に価値が出るか」を問う。この発想の転換こそが、期待先行の現場を実装に着地させる鍵になります。

5-3. フィジカルAIの視点: L1・L2の「業務データ」が、いずれL4の資産になる

LOGISTICS TODAYが示したL1〜L4の整理は、示唆に富みます。今回の主戦場はL1(データ化)・L2(意思決定補佐)でしたが、この2つを地道に進めることは、将来のL4(フィジカルAI)への布石 でもあります。

フィジカルAIには「ロールバックできない」という決定的な性質があります。ソフトウェアAIと違い、現場で物を壊し、人を傷つけたら元に戻せません。そして、ヒューマノイドが大量生産で低コスト化する時代が来ても、それを自社の業務で動かすには、物流&SCM変革テックEXPO(LGX2026)にて発信した通り、自社の業務データが不可欠 です。

つまり、今回議論された「紙のデータ化」「属人化した判断の言語化」「作業実績の蓄積」は、単なる効率化にとどまりません。それは フィジカルAI時代に自社の現場にヒューマノイドを導入するための、業務データという資産を積み上げる営み です。開発競争で米中と張り合うのではなく、自社の業務を解像度高く記述しデータを溜めること。この2年間の使い方が、フィジカルAI時代の勝ち筋を分けます。L1・L2から始めよという今回の結論は、この長期の文脈でこそ意味を持ちます。

6. 参考文献・主要情報源

LOGISTICS TODAY 当日の取材記事 元記事 ― LOGISTICS TODAY 物流AI、期待先行の現場に実装の正しい道筋示す logi-today.com で当日の取材記事を読む →
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