2026年4月15-16日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「Startup JAPAN EXPO 2026」併設の「物流&SCM変革テックEXPO(LGX 2026)」基調講演に、当社CEO・物流AIアーキテクト 大野有生が登壇しました。本レポートでは、当日のセッションを振り返りご報告いたします。
セッション概要
セッションテーマは 「フィジカルAI、日本の勝ち筋は業務データ」。フィジカルAI(ハードウエアやロボットに、AIの知能と意思決定を組み込んだもの)への投資が米中を中心に桁違いの規模で動き出すなか、日本の物流現場は何で勝負するのか――開発で米中に後れを取る日本が、実装と業務データの蓄積を急ぐ局面に入ったことを示す議論の場となりました。
登壇したのは、大阪大学教授でAVITA株式会社 代表取締役社長の石黒浩氏、株式会社セルフィット 代表取締役社長の宇佐美典也氏、そして当社CEO・物流AIアーキテクト 大野有生の3名。モデレーターはLOGISTICS TODAY 編集長の赤澤裕介氏が務めました。
LGX 2026 基調講演(左から、赤澤裕介氏、石黒浩氏、宇佐美典也氏、大野有生)
大野(Nexgen Japan):開発競争でなく実装競争へ ―「データを溜めていく2年間」
セッションで大野は、フィジカルAIを「ハードウエアやロボットに、AIの知能・意思決定を組み込んだもの」と定義したうえで、ソフトウエアAIとの決定的な違いに注意を促し、物流事業者に向けて以下のメッセージを発信しました。
フィジカルAIには「ロールバックできない」という決定的な性質があります。ソフトウエアAIと違い、現場で物を壊し、人を傷つけたら戻せません。だから倉庫や輸送の現場で働く人が「ロボットを止める権限」を持つ設計が、実装の前提条件です。
世界市場は2026年の60兆円から2040年には500兆円超へ。米中は今後5年で110兆円を投じる一方、日本は1兆円。開発競争で張り合うのは、もう現実的ではありません。
しかし、2028年からBoston Dynamics × Hyundaiの「Atlas」が生産現場に投入されます。その時、外から来る知能をあなたの業務で動かすには、あなた自身の業務データが必要です。これからの2年間は、米中と競う時間ではなく、自社の業務を解像度高く記述し、データを溜めていく時間。物流事業者の皆さんにお伝えしたいのは、この一点です。
石黒氏(AVITA):ファンデーションモデルでなく、実装層に日本の強み
石黒氏からは、大規模言語モデルやファンデーションモデルの開発で米国と張り合う必要はなく、センサーや周辺の仕組みと統合して工場や日常生活で実用化する「実装層」に日本の強みが残るとの見解が示されました。iPhoneの部品の6割が日本製であるという例も引かれ、ハードウエアと実装側での日本の優位性が論じられました。アバター(遠隔操作ロボット)の社会実装を進める石黒氏は、フィジカルAIとアバターを広い意味で同じ系譜に位置づけたうえで、家庭内で安心安全に働くヒューマノイドの実現にはまだ時間が必要との見方も示しました。
宇佐美氏(セルフィット):倉庫の内側と外側で進度が違う ―「発着連携」の課題
宇佐美氏は、軽貨物配送マッチングプラットフォーム「DIAq(ダイヤク)」の運営経験を踏まえ、倉庫内の自動化は社内で標準化が容易で急速に進む一方、倉庫の外(ラストワンマイル)は発荷主と着荷主の規格が揃わない限り実用化が進まないと指摘。発荷主と着荷主の意識の非対称性が、外側の自動化を阻んでいる構造を解説しました。
そのうえで、2026年4月に全面施行された物流統括管理者(CLO)選任義務化を引き合いに、発着連携と標準化が今年・来年の重要テーマになるとの認識が示されました。
まとめ ― Nexgen Japanの視点
開発競争で米中と張り合う段階はすでに過ぎ、日本企業に残された勝負どころは「実装」と「業務データの蓄積」です。自社の業務フロー・制約・判断基準をデータとして蓄積し、外から入ってくる知能を自社業務に適合させる土台を作ること――それが、これからの2年間の最重要課題であると当社は考えています。
Nexgen Japanは、物流・SCM領域におけるAI実装支援と業務データ整備の伴走を通じて、日本企業の「実装層での勝ち筋」をクライアントの皆様と共に探ってまいります。フィジカルAI時代に向けた業務データの設計・蓄積・活用について、お気軽にご相談ください。
関連リンク
LOGISTICS TODAY 当日の記事「フィジカルAI、日本の勝ち筋は業務データ」(2026年4月23日掲載) https://www.logi-today.com/943210


