この記事のポイントベトナムは「工場」から「市場」へ拡張している。 チャイナプラスワンの主語は中国企業自身に変わり、現地の日系経営者は、消費市場を狙う第二の進出フェーズが始まったと口を揃える。
コールドチェーンは「南部にハード、北部に空白」。 冷蔵容量の87%が南部に集中し、南北2,000kmを結ぶ低温の定期輸送は成立していない。その空白が、この秋から埋まり始める。
商流はモダントレードを飛び越え、デジタルコマースへ直行。 TMS普及率は実感値でほぼ0%。守るべきレガシーがないことが、そのまま後発優位の事業機会になる。
本稿は、Nexgen Japan、NTT e-Moi、LOGISTICS TODAY の3社共催により2026年7月29日から8月2日にかけて実施した、日越サプライチェーン接続調査2026の総括である。調査団はホーチミン市および近郊において、JETROホーチミン事務所、カイメップ・チーバイ港の深水コンテナターミナルSSIT、ロンドゥック工業団地を訪問し、日系の荷主、物流、物流不動産、IT企業の経営層にヒアリングを行うとともに、ベトナム唯一の国際物流展VILOG 2026を視察した。
本稿では、現地で得た一次情報を公開統計と突き合わせながら、日本の物流企業と荷主企業に向けた示唆を提示する。
目次
- グローバルサプライチェーン再構築における、ベトナムの役割
- マクロ経済:二桁成長という“国家ノルマ”
- コールドチェーン:南部に偏る供給、北部に未開拓需要
- 先進技術によるサプライチェーン高度化:空白がもたらす後発優位
- 結び:接続を設計する側に回る
1. グローバルサプライチェーン再構築における、ベトナムの役割
「チャイナプラスワンの主語が変わった」という現地の証言から始めたい。
チャイナプラスワンとは、中国一極集中のリスクを避けて生産拠点を第三国へ分散させる動きを指すが、20年前から10年前は、日本企業が中国拠点の一部をタイ・ベトナム・インド等の新興国へ移す話だった。
これが現在は、中国企業自身が主語となった。すなわち、ディスプレイパネル、太陽光、EV部品といったハイテク分野で自国から第三国へ出て行く。米国の対中関税を背景に、中国で最終製品の手前まで仕上げ、最終工程だけをベトナムで行うことで高関税を避ける動きも顕著だ。ベトナムはもはや単なる低コスト生産地ではなく、米中対立の緩衝地帯として世界の製造網が組み替えられる際の受け皿となっている。
この再編を物流面で支えるのが、南部の深水港カイメップ・チーバイだ。ベトナムの港湾コンテナ取扱は、ホーチミン市既存港の37%とカイメップ・チーバイの28%を合わせ、南部だけで約65%を占める。伸び率は対照的で、2025年はホーチミン市既存港の前年比6%増に対し、カイメップ・チーバイは19%増。深水港への欧米直航の大型船を受け、市内既存港は国内配送のハブを担う構造的シフトが進んでいる。
図表1. カイメップ・チーバイ港は日本との接続が弱い
カイメップ・チーバイ港のターミナルオペレーターSSIT社は、今年、港湾群で最大となる25万DWT、2万4,000TEU級の船型認可を取得し、中国・米国西岸・東岸・ガルフ、欧州、アフリカへの直航6サービスを擁する[18]。
※ DWT(載貨重量トン数):船舶が積載できる貨物等の最大重量。TEUは20フィートコンテナ換算の個数単位。
ここで強調したいのは、日本との接続の弱さである。SSIT社の直航6ルートのうち日本寄港は北米西岸ルートにおける横浜のみで、連携船社に日本勢はほぼ見当たらない。ベトナムが中国・北米・欧州向けの輸出ハブとして急成長する一方、日本はその成長回廊に構造的に組み込まれていなかった。
米中対立の緩衝拠点化(製造)ゆえの物流面での欧米・中国ハブとしての機能成長を見せているのだが、日本の接続の弱さは日越間貿易におけるあしかせとなるだろう。
輸出生産拠点化に加えて、ベトナムでは更なる2つの役割(消費市場化・デジタル実装推進)が拡張していることも重要な変化として当レポートに付したい。
図表2. 拡張するベトナムの役割
特に、現地の日系経営者は、製造業進出の波が一巡し、消費市場を狙う第二の進出フェーズが始まっていると口を揃えていた。これが、日本企業がこれから向き合うべきベトナムである。
2. マクロ経済:二桁成長という“国家ノルマ”
JETROホーチミンからヒアリングとNexgenの公開統計調査によると、2025年の実質GDP成長率は8.02%、2026年上半期は8.18%とさらに加速している[3][4]。
その上で国会は2026年の成長目標を10%以上と決議し[1]、2026年1月の第14回共産党大会は、2026年から2030年の年平均成長率10%以上、2030年に一人当たりGDP約8,500ドル、2045年までに高所得先進国入りという長期目標を採択した[2]。
図表3. ベトナム経済の主要指標と政府目標
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直近の成長実績 | 2025年実質GDP成長率 8.02%、2026年上半期 8.18% [3][4] |
| 2026年の政府目標 | GDP成長率 10%以上(2025年11月 国会決議) [1] |
| 中期・長期目標 | 2026〜2030年 年平均10%以上、2030年 一人当たりGDP約8,500ドル、2045年 高所得先進国入り [2] |
| 人口動態 | 人口約1.02億人、中位年齢33.9歳。中間層は2023年比で2026年に倍増の見込み [13] |
| 物流コスト | GDP比16〜17%と先進国の約2倍。高成長の主要ボトルネック [14] |
実績8%の国が目標に二桁を掲げるのは、願望ではなく統治体制としての決意表明だ。
「これを政治スローガンと読み流すことはできない」との証言があった。背景には人口動態への切迫した危機感がある。ベトナムの人口は約1.02億人、中位年齢は33.9歳と若い[13]が、既に65歳以上人口が1割を超え、2030年代末には生産年齢人口が頭打ちになると見込まれる。2040年が来る前に十分に発展しておかなければ手遅れになるという党指導部の焦りである。
トーラム体制は中央省庁を18から14へ、地方自治体を63から34へ再編し、法改正は年間約30本から100本ペースへ増えた。“走りながら法整備する”ほどの制度改正のスピード感と反面にはらむ不確実性は、外国企業にとってリスクでもある。
インフラも同じ切迫感を持ち、同じ速度で開発が推進される。
ロンタイン新国際空港は2026年12月1日に商業運航を開始する予定であり、総投資673億ドルの南北高速鉄道は2026年12月の着工が予定される[17]。高速道路の供用延長は2020年末の1,163kmから2025年末には3,300km超へと、5年で約3倍になった。
ベトナムは、高いマクロ経済成長目標を掲げ、多少強引ともいえる急ピッチのインフラ整備と、消費市場への転換を図っているのだ。この上で、物流業界の事業機会を次章で探索しよう。
3. コールドチェーン:南部に偏る供給、北部に未開拓需要
経済成長を支える物流機能のうち、本調査が重点を置いたのがコールドチェーンである。結論から言えば、ベトナムのコールドチェーンは、南部はハードが整い、北部はほぼ空白、そして全国的に運用のソフトが未成熟という、3つの非対称構造にある。
※ コールドチェーン:冷凍・冷蔵・チルドなどの低温を保ったまま、生産から消費まで途切れずに保管・輸送する物流の仕組み。
3.1 ホーチミン先行の集中投資と、南北2000km接続のはじまり
大型商業冷蔵施設の容量は全国約132万パレット。その87%が南部に集中し、北部は11%、中部は1%に過ぎない[5]。日系の冷蔵冷凍倉庫もホーチミン周辺で新設が相次ぎ、現地では「乱立」と評されるほどだ。
一方で国全体を見れば、人口1万人当たりの冷蔵容量は132パレットと、タイの204、中国の913、日本の1,592に遠く及ばない[5]。過剰どころか、絶対量はまだ立ち上がり期だ。実際に、日系荷主企業からは、供給過剰の懸念よりも、「選択肢が増えて助かる」という声を聞いた。このコールドチェーン市場は拡大傾向が見込め、2034年に向け年率13%超の成長が予測されている[6]。
図表4. 需要・供給能力の地理的偏在
問題は、コールドチェーン需要の地理的偏在が、南北間の接続を不可能にしていることだ。南の商都ホーチミンから北の首都ハノイまでは陸路で約2,000km。この距離をチルド温度帯で結ぶ定期輸送は、現時点で成立していない。理由は単純で、北部に受け皿となる冷蔵倉庫がないからである。現地荷主へのヒアリングでは、「ハノイ側に毎日発注・毎日納品へ対応できる冷凍物流が存在しないため、ホーチミンで製造した商品をハノイの店舗網へ届けられず、複数の日系小売・食品企業の北部展開が、全部物流の問題で止まっている」という証言を得た。
需要はある。売り先もある。運べないだけである。
しかし、膠着状態が長く続いたコールドチェーンの断絶が、いま動き出す。ベトナム国内の南北冷凍冷蔵混載便を月5,000トン規模、週3便まで育ててきた鴻池運輸が、この秋ハノイに冷蔵倉庫を開設することが見込まれる[7][8]。北部に冷蔵拠点ができて初めて、南部から北部への低温幹線輸送と、ハノイ在庫からの毎日納品が構造として成立する。調査団はこれを、南北コールドチェーン元年と見る。
次の課題は片荷である。南部には冷凍食品、生鮮、水産加工品と、北へ送る低温貨物が豊富にある一方、北部から南部へ戻る低温貨物は乏しい。往路満載、復路空荷では運賃は下がらず、輸送事業の採算も安定しない。
しかし裏を返せば、ここに商機がある。北部で低温貨物を生み出す事業、たとえば食品製造、農水産加工、輸入食品の北部通関・配送センター事業などにとって、幹線の復路輸送力が割安に手に入ることを意味するからだ。つまり、片荷は参入障壁ではなく、北部進出の投資仮説そのものである。
実際、かつての南北輸送は、北部に集積した組立製造業向けの部材が北から南へ流れ、南から北へ戻る便の空きが常態だった。それが今、消費財の南から北への流動で埋まり始めている。この風向きの反転こそ、ベトナムの重心が生産から消費へ移ったことの物流面での現れである。
従い、より具体的に言うと、今から参入するコールドチェーンを必要とする事業者は、北部で製造をすることにより、安定した利益率でハノイ・ホーチミンの需要を取り込める可能性がある。
3.2 人口動態:平均年齢30代前半の国で、これから“冷える”食卓
コールドチェーン需要の先行きは、人口動態がほぼ規定する。
中位年齢33.9歳は、日本でいえば1980年代前半に相当する若さである。都市化と共働き化が進み、中間層は2023年の約13%から2026年には26%へ倍増したと推計される[13]。冷凍食品、チルドデザート、宅配食といった需要は、可処分所得が一定水準を超えた瞬間に立ち上がる所得弾力性の高い需要であり、一人当たりGDPが5,000ドルを超えたベトナムは、まさにその閾値の上にいる。
現地の日系菓子メーカーの事例が象徴的だ。日本では1店舗当たり日販数個の和菓子が、ベトナムのコンビニでは日販70個を記録する。同社の主力商品は冷凍で365日保管でき、解凍後は常温で180日もつという冷凍前提の設計であり、在庫を持ちたがらない現地小売の毎日発注に対し、冷凍倉庫からのピース単位出荷で応えている。
若い人口構成と冷凍前提の商品設計の組み合わせが、コールドチェーン需要を今後10年にわたり構造的に押し上げていく。
3.3 商流:モダントレードを飛び越えるリープフロッグと、事業機会の定義
ベトナムの小売は、パパママショップと呼ばれる家族経営の零細店を主体とするトラディショナルトレードが、依然として約85%を占める。
駐在歴もある筆者は、自分が赴任した2010年代から15対85でずっと変わらなかったことを理解している。10年前も、いよいよモダントレードが来ると言われていた。しかし来なかった。食品小売におけるモダントレードの浸透率は、2023年時点でも約12%にとどまる[9][10]。
図表5. ベトナム商流のリープフロッグ現象
一方でeコマースは、全く違う速度で生活に浸透した。2025年の物販系EC市場は約310億ドル、前年比25%増[20]。プラットフォームはShopeeが約56%、ライブコマースを武器とするTikTokが約42%と2強を形成し[12]、ソーシャルコマースやライブコマースは都市部の若年層の日常になっている。
このデジタルコマースの存在感は、日本と比べるとより鮮明になる。絶対額では、日本のEC市場約15.3兆円に対し、ベトナムは約310億ドル(約4.8兆円)と3分の1に過ぎない[19][20]。しかし名目GDPに対する比率で見ると、逆転する。日本の約2.3%に対しベトナムは約6.2%と、経済規模対比で、なんと日本の約2.7倍の存在感を持つ。
更に、成長速度が決定的に違う。驚くべきことに、ベトナムのデジタルコマースは、年25%前後の急成長を続けている。GDP自体が年8%で伸びる国で、ECはその3倍の速度で伸びているのだ。成熟期の日本が年数%の伸びにとどまっているのと対照的だ。デジタルコマースはもはや補助的な販路ではなく、ベトナムの商流を規定する主要インフラである。
つまりベトナムの商流は、個人商店からスーパー・コンビニへ、その次にECへ、という日本が歩んだ段階を踏まない。トラディショナルトレードからモダントレードを飛び越えて、デジタルコマースへ直接移行するリープフロッグが起きている。
※ リープフロッグ(蛙跳び)現象:新興国が先進国の辿った発展段階を飛ばして、最新の技術・業態へ一足飛びに移行すること。
この解釈は、物流事業の設計を根本から変える。日本の常識では、小売の近代化に伴って店舗網向けのセンター物流が育ち、その上にEC物流が乗った。
ベトナムではその中間段階が細いまま、EC型の物流、すなわち都市近郊のフルフィルメントセンター、バイクによるラストワンマイル、そして冷凍・チルド宅配への要求が先に来る。現地では、高速道路を使わずバイクで市内配送できる立地の倉庫が既に争奪戦となっており、EC事業者の実需が物流不動産の価格形成を動かしている(日系デベロッパーヒアリング)。
コールドチェーンの事業機会をこの文脈で定義し直すと、3つに整理できる。
ベトナムのコールドチェーン、3つの事業機会
ECおよびデジタルコマース対応の冷凍チルドフルフィルメント
食品ECの温度帯対応は始まったばかりである。
南北幹線輸送と北部配送センターを組み合わせた全国配荷網
北部の空白が参入の勝機だ。
運用品質のソフト面の事業化
現地では、「立派な冷凍倉庫でも出荷待機中の温度管理が甘い」、「輸入時に港でコンテナが開けられコールドチェーンが途切れる」、「小売配送の返品率が3割に達する例がある」といった証言が相次いだ。
ハードの供給が進んだ今、価値の源泉は温度と時間のマネジメント、すなわち日本の物流が最も得意としてきた運用品質へ移る。ただし、日本品質をそのまま持ち込めば価格が合わない。日本産食品を扱う富裕層向け市場のように品質を価格へ転嫁できる分野から入り、現地化と両立させる目利きが要る。
なお、税務の電子インボイス義務化に対応できないパパママショップの廃業が始まったという証言もあった。85%の牙城は今後、モダントレードにではなく、デジタルコマースと制度対応力を持つ組織小売に侵食されていくとみる。
4. 先進技術によるサプライチェーン高度化:空白がもたらす後発優位
ベトナム政府はAIとデジタルを国家戦略の中核に据えている。
2024年末の政治局決議57号は科学技術とデジタル変革を最優先課題と位置づけ[15]、2026年7月に承認された国家デジタル変革戦略2026-2030は、デジタル経済のGDP比30%以上、中小企業の40%以上へのAI導入、物流を含む分野別デジタルプラットフォームの整備を掲げる[16]。
実装も進む。通信最大手Viettelは1日140万個を処理するスマート仕分けハブを稼働させ人件費を6割削減し[14]、AWSは2026年にベトナム国内データセンターを開設した。これによりデータの国内保存規制というクラウド活用の障壁は解消へ向かう(現地ヒアリング)。
しかし現場に降りると、風景は一変する。現地IT企業へのヒアリングによれば、輸配送管理システム(TMS; Transportation Management System)の普及率は実感値としてほぼ0%。倉庫管理システム(WMS; Warehouse Management System)も、統計上は4〜5割だが、その大半は会計システムの在庫機能を数えたものであり、現場の実行系として機能しているのは実質1割程度。多くの物流現場は、いまもExcelと手作業で回っている。国家戦略と現場の間にギャップがあるのだ。
調査団はこのギャップを、後発優位の事業機会と読む。
日本はWMS、TMS、受発注システムを四半世紀かけて個別最適で導入し、いま莫大なコストをかけて統合し直している。ベトナムには守るべきレガシーシステムがない。ならば最初から、商流情報と物流情報を一体で設計した統合プラットフォームを実装できる。
また、需要が爆発するデジタルコマース(Eコマース、ライブコマース、ソーシャルコマース)に特化したソリューションも必要だ。日本と事情が異なる国に対して、日本の物流パッケージを輸出する必要はない。調査団は、現地パートナーとの間で、WMSとTMSを一体化した物流スイートをベトナム市場向けに構築する事業仮説について、今後具体的に検討を始めたいと考えている。
留意点は2つある。
この市場ではローカル適合性が技術水準に勝つ。 メッセージアプリ市場でLINEやWeChatを退けたのは、最もローテクな国産アプリZaloだった。高機能な日本製パッケージの移植ではなく、現地の商習慣に合わせた再設計が前提となる。
AIに対するベトナムの姿勢は、まず使い、回しながら精度を上げる。 これは、実証実験で足踏みしがちな日本と好対照をなす。この速度感に合わせられない企業は、技術で勝ってスピードで負けることになる。
5. 結び:接続を設計する側に回る
以上を総括すると、次のようになる。
ベトナムは工場から市場へ拡張している。コールドチェーンは南部ハード整備済み、北部空白という非対称構造にあり、その北部の空白がこの秋から埋まり始める。商流はリープフロッグによりデジタルコマースへ直行し、物流に求められる要件を根本から書き換えている。
Nexgen Japanは、参入を検討する日本の物流企業と荷主企業に対し、次の3点を提言する。
提言1:北部コールドチェーンに、空白が埋まる前に入る。
ハノイ周辺の冷蔵倉庫の空白は、先行者が埋めれば数年で事実上の標準を握れる規模しかない。片荷を恐れて様子を見るのではなく、北部発の低温貨物を自ら創る事業、すなわち食品製造、農水産加工、輸入食品の配送センターとセットで参入する投資仮説を組むべきだ。復路が空いている今だからこそ、幹線輸送力を優位な条件で確保できる。
提言2:ITプラットフォームを、日本ではなくベトナムで先に作る。
TMS普及率“実質0%”の市場は、裏を返せば設計思想を自由に選べる市場である。温度、賞味期限、車両、在庫、決済の情報を最初から一体で持つ南北コールドチェーンの情報基盤は、ベトナムで実証してから日本へ逆輸入する順序すらあり得る。物流の現物を握る企業とデジタルを担う企業の組み合わせが、その担い手となる。
提言3:単独進出ではなく、機能を持ち寄る連合で行く。
現地で繰り返し聞いたのは、大手総合物流の再現ではなく、保税倉庫の運用、温度管理品質、マテリアルハンドリング、システム、人材育成といった個別機能への具体的な需要である。とりわけ日本の中堅物流企業には、複数社で機能を束ねる調査団型の進出モデルが現実的であり、本調査自体がその第一歩である。コールドチェーン人材の育成という息の長い投資も、連合でなら担うことができる。
日越のサプライチェーンは、放っておいても接続されない。ベトナム発の直航航路に日本の港がほとんど無いという事実が示す通り、成長するベトナムの物流網に、日本が自動的に組み込まれることは絶対にない。接続は、それを主体的に設計する者が使う言葉だ。Nexgen Japanは、その設計図を書く側に立つ。
日越サプライチェーン接続調査については、視察団のメンバーがそれぞれの観点で報じている。包括的な理解促進のため、以下の関連記事も参照していただきたい。
参考文献・主要情報源
- VnExpress International. (2025-11-13). National Assembly sets 10% GDP growth target for 2026.
- Viet Nam Government Portal. (2026-02-14). Full Resolution of 14th National Party Congress.
- ベトナム国家統計局(NSO). (2026-01). Socio-economic situation in the fourth quarter and 2025.
- VietnamPlus. (2026-07-06). Vietnam posts 8.18% GDP growth in H1 2026.
- C+ Consulting. (2026-07-19). Vietnam Cold Storage Market 2026-2030: A Strategic Anchor and Map of Regional Opportunities.
- IMARC Group. (2026). Vietnam Cold Chain Logistics Market Forecast 2026-2034.
- Daily Cargo. (2026-01). 鴻池運輸 越国内冷凍冷蔵「南北便」輸送量2.5倍 ハノイに倉庫開業予定.
- 日本海事新聞. (2023-11-16). 鴻池運輸のベトナム冷凍冷蔵物流事業に関する報道(ハノイ・ダナン等への拠点新設検討).
- Vietcap Securities. (2024-10). Grocery Sector Report.
- B-Company. (2025-02). The Modern Trade leading Vietnam's retail market.
- Vietnam Briefing. (2026). Vietnam's E-Commerce Sector Outlook in 2026.
- Vinex. (2026). Vietnam's E-commerce Market: 2025 Performance and 2026 Outlook.
- Vietnam Briefing. (2026-07-28). Understanding Vietnam's Middle Class: Size, Spending Patterns and Opportunities.
- VietnamNet. (2025-01-10). Vietnam tackles high logistics costs with automation and smart hubs.
- ベトナム共産党政治局. (2024-12-22). 決議57-NQ/TW(科学技術・イノベーション・国家デジタル変革の突破的発展).
- Vietnam News. (2026-07-21). Viet Nam approves national digital transformation strategy for 2026-30(Decision 1266/QD-TTg).
- VnExpress International. (2026). Vietnam to begin construction of $67B high-speed railway in December 2026.
- SP-SSA International Terminal. (2026-07). SSIT Information(ベトナム港湾協会統計を含む調査団入手資料).
- 経済産業省. (2025). 電子商取引に関する市場調査(BtoC物販系EC市場規模).
- ベトナム産業貿易省(MoIT)電子商取引・デジタル経済庁. (2026). ベトナムEコマース白書(Vietnam E-commerce White Book).
※ 本文中の現地ヒアリング情報は、2026年7月29日から8月2日に実施した現地調査(JETROホーチミン事務所、SSIT、ロンドゥック工業団地、日系の荷主・物流・物流不動産・IT企業への面談)での聴取に基づく。
※ 本稿の情報は2026年8月上旬時点のものです。引用した一次資料・報道は本文中に明記しました。
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